# 92 : 膝蓋骨内方脱臼整復術 & 前十字靭帯断裂整復術
小型犬の膝蓋骨内方脱臼と前十字靭帯断裂の治療例
今回は、当院で行った小型犬の「膝蓋骨内方脱臼」と「前十字靭帯断裂」を治療した症例をご紹介します。同じような症状で悩まれている方に少しでも参考になれば幸いです。
患者情報と症状
今回の症例は10歳のトイプードルです。
右後肢をかばうような歩き方をしていて、痛みが強そうな様子があるとの事で来院されました。
診察の結果、右後肢の膝蓋骨(膝のお皿)の内方脱臼と、前十字靭帯の断裂が確認されました。
診断と治療方針
膝蓋骨の脱臼は比較的よく見られる症状ですが、前十字靭帯の断裂が併発すると、歩行のバランスがさらに崩れ、長期的に関節炎や痛みを引き起こす可能性があります。
今回の治療では、次の手術を行いました。
膝蓋骨内方脱臼整復術 + 前十字靭帯断裂整復術
1. 膝蓋骨内方脱臼の矯正
- 縫工筋の解放術
縫工筋という筋肉が膝蓋骨を内側に引っ張っているため、この筋肉を切離(黒丸)しました。
- 滑車溝形成術
膝蓋骨がしっかりと収まるよう、膝の骨(滑車溝)を削って深くしました(青丸)
- 関節包の縫縮
脱臼しないよう、余剰な関節包の一部を切除(白丸)し、膝蓋骨を安定させました
2. 前十字靭帯断裂の治療
- 断裂部のトリミング
切れてしまった靭帯の損傷部分をきれいに取り除きました。 - ラテラルスーチャー法
膝の外側に特殊な糸を使い、靭帯の代わりとなる補強を施しました。
術前・術後の比較
術前と術後のレントゲン画像です。
術前
膝蓋骨が内側にずれており(赤丸)、靭帯の断裂(赤矢印)も確認されます。
術後
膝蓋骨が正しい位置(黄丸)に収まり、補強術により安定した状態です。
術後の経過
術後の経過は順調で退院時には患肢に体重をかける様子が見られました。その後の抜糸時に来院された際も歩行は順調との事でした。
まとめ
膝蓋骨脱臼や前十字靭帯断裂は放置すると、愛犬に長期的な負担をかけることがあります。今回のように早期に適切な治療を行うことで、日常生活の質を大きく向上させることが可能です。
獣医師:林 敬明
この内容は2024年12月時点の情報です。
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