# 73 : 犬の腹腔内精巣腫瘍摘出術 / 腫瘍化しやすい【停留精巣】
雄犬の精巣(睾丸)は、生まれた時はお腹の中にありますが、生後数か月するとお腹の中から陰嚢内(ペニスの後ろの袋)に降りてきます。精巣は精子を作りますが、精子は熱に弱いため温かいお腹の中ではなく、温度が低い陰嚢内に降りてくる必要があります。しかし一定期間過ぎても正常に降りてこない精巣を停留精巣と言います。呼び方は停留精巣以外にも潜在精巣や隠睾などと呼ばれています。
今回の症例は12歳のイタリアン・グレイハウンドです。
身体検査では右側の精巣は陰嚢内に存在しましたが、左側の精巣は陰嚢内や鼠径部の皮下に認められませんでした。腹部のエコー検査で膀胱の左頭側に精巣腫瘍を疑うmassを見つけたため、左右の精巣を摘出させて頂く事になりました。
腹腔内精巣腫瘍摘出手術
開腹下での左の精巣(黄丸)です。
摘出した左右の精巣(睾丸)です。右側の精巣と比較して左の精巣が腫大しているのがわかります。
病理検査の結果、左の精巣はセミノーマとセルトリ細胞腫の混合腫瘍でした。
まとめ
- 精巣腫瘍は去勢手術さえしていれば防げる病気です。
- 停留精巣は通常の精巣に比べて10倍以上も腫瘍化しやすいと言われていますので、停留精巣が発覚した場合には腫瘍化する前の幼齢期での去勢手術が勧められます。
獣医師:林 敬明
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