林動物病院

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# 64 : 猫の乳腺片側全切除術 / 【ほとんどが悪性の猫の乳腺腫瘍】

猫にできる乳腺腫瘍は犬と違い、85~95%が悪性の【癌】です。

猫の乳腺は4対あり、4つの乳腺は網目状になったリンパ管ですべて繋がっているため、たとえ小さな乳腺癌でも外科手術により乳腺の片側・もしくは両側の全摘出手術が推奨されています。

 

猫の乳腺片側全切除術

右側の第4乳頭に2.5cm程のシコリ(赤丸)が認められ、細胞診の検査で乳腺癌と判断されました。

肺野への転移が認められなかったため、外科手術で右側乳腺全切除、腋窩・副腋窩リンパ節、鼠径リンパ節の切除を行う事にしました。

腋窩リンパ節を切除した後の写真です。

深胸筋の一部を切開し、外側胸動脈(黄矢印)のすぐそばにある腋窩リンパ節へアプローチします。この外側胸動脈を損傷すると酷い合併症を引き起こすので腋窩リンパ節を切除する時は細心の注意が必要です。

右側の乳腺を全て切除し皮膚の縫合を終えた写真です。

痛みを伴う手術ですので、術後の鎮痛管理として鎮痛カテーテル(白矢印)を設置しました。また漿液が貯留した場合を考え排泄ドレーン(黄丸)の設置も同時に行っています。

術後の回復は順調で無事に退院してくれました。

病理検査の結果はやはり乳腺癌でした。腋窩リンパ節への転移はありませんでしたが、鼠径リンパ節には乳腺癌の転移が認められました。

今は抗がん剤の治療中ですが、調子も良く体重も増えてきています。

まとめ

  • 猫の乳腺腫瘍の85~95%が悪性の乳腺癌と言われています。また乳腺癌は早期に遠隔転移を起こします。
  • 猫の乳腺腫瘍は2歳以下に避妊手術を受ける事で発生の確率を下げる事が出来ます。逆に言えば2歳以降で避妊手術を行っても乳腺腫瘍の発生リスクを下げる事はできません。特に1歳以下で避妊手術を行った猫では有意に乳腺腫瘍の発生リスクを下げると言われています。
  • 乳腺癌の大きさが2cm以下で治療を行うと生存期間が長い事がわかっています。しかし乳腺癌が3cm以上になってから治療を行っても極端に平均生存期間が短くなるため、愛猫の乳腺に『しこり』を発見したら、たとえ小さくてもなるべく早く動物病院を受診してあげて下さい。

 

 

獣医師:林 敬明