# 61 : 犬の胆嚢摘出術 / 【立て続いた4件の胆嚢摘出手術】
動物病院では同じ病気が立て続く事がよくあります。先月は4件の胆嚢摘出手術が続いたので簡単にまとめてみました。
手術を行った理由は胆嚢粘液嚢腫・胆石・総胆管の閉塞
と様々でした。
胆嚢摘出手術 (4症例)
①肝臓の内側右葉と横隔膜の癒着(黄丸)、肝臓の内側右葉と胆嚢頸部が癒着していて少し大変だった胆嚢粘液嚢腫の症例
②基礎疾患にクッシング症候群と多発性肝嚢胞があった症例
術前の肝臓エコーで肝臓内に多数の嚢胞(黄矢印)が認められました。
③定期的な胆嚢エコーのフォロー中、急速に胆石が増加した症例
術後の摘出した胆嚢内から出てきた多量の胆石の写真
④総胆管の閉塞で十二指腸切開を行った症例
胆嚢管(青矢印)はチタンクリップを使用し、総胆管を開通させるために十二指腸を切開(白矢印)した写真
みんな無事に退院し、抜糸時は元気な姿で来院してくれました。
まとめ
胆嚢摘出手術を行う理由は今回紹介した症例のように1つではありません。
胆嚢の摘出手術中に思う事は、同じ胆嚢は1つもないという事です。胆嚢の位置・中身の性質・膜の強度や状態、総胆管の中身、中肝静脈の位置、肝臓との癒着具合、胆嚢破裂、総胆管閉塞など、どの症例も毎回違います。術中にその症例に適切な方法を選択して手術を進めていきます。胆嚢摘出時に行う総胆管の洗浄方法もいくつもあるので、その症例に合った方法で行っていきます。
胆嚢摘出手術はリスクを伴う手術です。
以前言われていた胆嚢摘出手術の周術期の死亡率ですが、症状がある場合で50%、無症状で約20%との報告がありました。
最近では症状がある場合の死亡率が20%、無症状では5%との報告もあります。
当院での手術成績ですが、2024年2月時点の直近50件の胆嚢摘出手術で2頭が亡くなっています。
1頭目は胆嚢炎で全身状態がかなり悪く膵炎も併発していた症例です。無事に胆嚢は摘出できましたが閉腹中に亡くなってしまいました。
2頭目は胆嚢摘出手術と直接関係がないかもしれませんが、サードオピニオンとして来院された時にすでに胆嚢が破裂し、重度の腹膜炎を起こしていた症例です。胆嚢摘出手術後の容態は安定していました。術後5日目に免疫介在性溶血性貧血を発症しました。2度の輸血を行いましたが術後15日目に亡くなってしまいました。
今まで無症状での胆嚢摘出手術では亡くなった症例はいませんが、教科書通りにいかないのが胆嚢摘出手術だと思います。そのため毎回神経を尖らせて手術を行っています。
獣医師:林 敬明
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