# 51 : 犬の脾臓摘出術 / 【破裂・癒着と手強かった脾血種】
今回の症例は9歳のラブラドールです。
前日からの元気消失・食欲不振と、3回の嘔吐が主訴でした。
各種検査をさせて頂いたところ、エコー検査で脾臓に腫瘤を認め、血液検査では貧血とDICを起こしている状態でした。また急性炎症のマーカーは測定不能な程高値でした。
DICの治療を開始し、手術をさせて頂く事になりました。
脾臓摘出手術
開腹した状態です。通常脾臓は周りの組織とくっついていないため、容易に体外に出す事が出来ます。
しかし今回の脾臓(白丸)は大網や周りの組織と癒着している状況でした。
当院ではシーリングデバイスがあるので、通常の脾臓摘出は短時間で終わります。しかし今回の脾臓(黄丸)は癒着を剥がしていかないといけません。癒着している組織の血管がとても豊富なため、繊細で丁寧な作業が必要でした。
手術を進めていくと、脾臓の一部は破裂をしていて腹腔内に出血も認められました。
おそらく以前に脾臓が破裂を起こし、破裂した脾臓を大網が覆っていたと思われます。
ようやく脾臓の一部を体外に出す事が出来ました。かなり大きな腫瘤です。
摘出した脾臓です。
病理検査の結果は腫瘍ではなく脾臓の血種でした。
手術後には食欲・元気が回復して、無事に退院してくれました。
術後10日目に抜糸で来院された時にはとても活発な様子でした。
まとめ
脾臓は血液を豊富に含んだ臓器です。
今回は脾臓の良性病変でした。しかし脾臓の腫瘤は脆い事が多いため、今回のように破裂をして出血を起こす事があります。
そのため、脾臓にできた腫瘤はたとえ腫瘍ではない良性病変でも、手術による脾臓の摘出が推奨されます。
しかし初期の脾臓腫瘤はなかなか症状が現れません。早期発見のためにも定期的に動物ドックなどの健康診断が大切です。
獣医師:林 敬明
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