# 43 : 会陰ヘルニア整復術 / 【未去勢のオスは要注意!!】
会陰ヘルニアとは、肛門周囲の筋肉が弱くなり隙間ができ、お腹の中の臓器や脂肪が飛び出てくる病気です。
ヘルニア孔から直腸・直腸憩室・前立腺・小腸などの臓器が脱出します。膀胱が飛び出るケースでは腎不全や膀胱壊死に陥る事もあるため、早期の処置が必要になります。
治療には内科と外科がありますが、内科治療はあくまでも症状の緩和に留まるだけなので、外科手術が推奨されます。
外科手術も今まで様々な方法が言われてきました。
・筋肉を縫い合わせて隙間を埋める手術
・仙結節靭帯を利用した方法
・フラップ(内閉鎖筋・浅殿筋・半腱様筋)
・総鞘膜を利用する方法
などがありますが、手術をしても再発するリスクが高いのがこの会陰ヘルニアの厄介なところです。
しかし最近では人口材料であるポリプロピレンメッシュを用いた整復方法で手術成績が良い事がわかってきました。
メッシュを使用した会陰ヘルニア整復手術
肛門の右下が膨らんでいます(青丸)。この部位にヘルニアがあり、腹腔内の臓器と脂肪が出て来ています。
肛門近くなので、汚染には注意が必要です。通常の消毒に加え、消毒剤が含まれているフィルムドレープを使用します。
皮膚を切開して、脱出している内容物を腹腔内に戻したあと、ヘルニア孔に合うサイズにプロピレンメッシュの形を作成します。
メッシュを縫合糸で生体と固定していきます。
今は仙結節靭帯に針をかけて糸を通している写真です。
この靭帯の隣には動脈があり、すぐ近くに大事な神経があるので、慎重に針を挿入します。
プロピレンメッシュの固定が終了した写真です。
なるべく強固な部位と固定したいため、腹側は坐骨骨膜・外側は仙結節靭帯・背側は肛門挙筋・内側は肛門括約筋と固定しました。今回は吸収糸と非吸収糸を使い分けて固定してあります。
会陰ヘルニアは未去勢の雄で起こりやすためホルモンが関係しているとも言われています。
そのため同時に去勢手術も行いました。左右の精巣です。
まとめ
会陰ヘルニアは腹腔内から出てくる臓器によって緊急を要する事があります。その場合、外科手術が必要になりますが、たとえ手術を行っても再発する事があります。
今回は右側の会陰ヘルニアのみを整復しましたが、同時に腹腔内臓器である結腸や、膀胱・前立腺を固定する手術を行う事もありますし、また同時に反対側の整復を行う事もあります。
会陰ヘルニアは雌でも起こる事がありますが、圧倒的に未去勢の雄で起こるので、繁殖を望まない場合はやはり適切な時期に去勢手術を行う事が大事だと思います。
未去勢のお尻の腫れには気を付けて下さい。
獣医師:林 敬明
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