林動物病院

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# 33 : 犬の脾臓摘出術 / 【腫瘍じゃないのに脾臓の破裂!?】

今回は『脾臓』に関するお話です。

あまり聞きなれない脾臓という臓器は、胃の左側に位置し、舌のような形をしています。

脾臓の働きは、血液の貯蔵・造血・老化した血球の破壊・免疫応答などを行っています。

血液の貯蔵をしている脾臓が破裂をすると、お腹の中で出血を起こし、最悪は死んでしまうケースもあります。

 

今回の症例です。突然の元気消失ということで来院されました。

血液検査では炎症マーカーのCRPが顕著に上昇していました。

超音波検査を実施すると、脾臓に腫瘤と腹腔内に液体の貯留が認められました。液体を抜いて検査をしたところ血液成分でした。

脾臓の破裂を疑い緊急手術をさせて頂きました。

 

脾臓の摘出手術

開腹をすると脾臓(黄矢印)が確認されます。

腹腔内には血液も溜まっていました。

脾臓にできた腫瘤(白矢印)が破裂しています。

破裂していた部位を覆うように体網(黄矢印)が癒着しています。

シーリングシステムを使用して、脾臓に繋がる血管の凝固・止血・離断を行い、脾臓を安全に摘出します。

通常の手術では縫合糸を使用して、血管の1本1本を結紮していきますが、シーリングシステムを使用すると結紮する必要がないため、手術時間を大幅に短縮する事ができます。

摘出した脾臓です。脾臓にできた腫瘤が破裂している事がわかります。

病理検査の結果は、脾臓の結節性過形成でした。結節性過形成は腫瘍ではありません。しかし、脾臓の結節性過形成は比較的脆弱な組織なため今回のように破裂してしまう事があります。

 

まとめ

今回は脾臓の摘出手術について話をしました。

冒頭で述べたように脾臓は血液の貯蔵庫です。そんな脾臓が破裂をすると腹腔内出血などの命にかかわる問題を引き起こします。

脾臓にできる疾患として、腫瘍性疾患と非腫瘍性疾患があります。

犬の腫瘍性疾患は血管肉腫という癌が有名です。

非腫瘍性疾患は結節性過形成や血腫などがあります。しかし腫瘍でなくても今回のように脾臓が破裂する事もあるので、脾臓の疾患では外科手術で脾臓を摘出することが一般的です。

脾臓は摘出しても他の臓器が脾臓の働きを代替してくれます。

脾臓の疾患は症状が出にくく、症状が出た時にはすでに病気がかなり進行していたり、緊急性がある場合が多いです。なるべく早期に発見してあげるためにも定期的な健康診断(動物ドック)が重要になります。

 

 

 

 

獣医師:林 敬明