# 31 : 犬の膀胱結石摘出術 / 【血尿・頻尿は要注意】
今回はワンちゃんにできた膀胱結石の摘出手術について説明します。
血尿を主訴に来院されました。
血尿の原因として代表的なものは、尿路結石や膀胱炎ですが、腎臓疾患、泌尿器の腫瘍、生殖器の疾患などでも血尿が認められます。
エコー検査を行ったところ、膀胱内に多量の結石(黄丸)が認められました。
レントゲン検査でも同様に膀胱内に多数の結石(赤丸)が認められます。
結石には様々な種類があります。検査では今回の膀胱結石はストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)でした。ストラバイトはフード・抗生剤・サプリメントなどで溶かすことが出来る結石です。しかし今回はひどい血尿と、飼い主さんの希望もあり、すぐに手術をさせて頂きました。
膀胱結石摘出手術
開腹をして膀胱(黄矢印)を露出します。
尿が腹腔内に入らないように、膀胱の周りはガーゼを敷きます。
膀胱を穿刺して尿を採取すると、飼い主さんの言う通りかなりの血尿です。
この尿は培養検査をして、細菌の有無を調べます。
膀胱を切開すると、肥厚した粘膜の奥に白い結石が目視できます。
膀胱内の結石を全て摘出します。また膀胱だけでなく、尿道も徹底的に洗浄し結石が残らないようにします。
膀胱内と尿道から摘出した結石(ストルバイト)です。
術後は血尿も治まりとても快適に排尿をしています。また尿の培養検査で細菌が見つかったので、適切な抗生物質を一定期間内服してもらいます。
今回の血尿の原因となった膀胱結石ですが、膀胱結石にはいくつもの種類があります。
ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)、シュウ酸カルシウム、尿酸アンモニウム、ケイ酸塩、シスチンなどです。しかし膀胱にできる結石のうち約80%がストルバイトとシュウ酸カルシウムと言われています。
ストルバイトの原因として食事や膀胱内の細菌感染があります。この結石は食事、抗生剤、サプリメントなどで溶解することが出来ますが、シュウ酸カルシウムは食事では溶かすことが出来ないため、必要であれば手術で結石の除去を行います。
まとめ
膀胱結石の症状として、血尿や頻尿がありますが、無症状の事も多々あります。しかし愛犬が排尿姿勢をとっても尿が出ていない場合は、膀胱の結石が尿道に詰まっている可能性があります。その場合は緊急事態です。尿が出ないため尿毒症になったり、膀胱破裂の危険がありますので、すぐにかかりつけの病院を受診して下さい。
獣医師:林 敬明
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