# 16 : 胆嚢摘出術・肝葉切除術 / 【夜間緊急手術】破裂した胆嚢粘液嚢腫
今回の症例紹介も前回と同様に胆嚢摘出手術の話をします。
前回の症例は胆石により胆嚢を摘出しましたが、今回は胆嚢粘液嚢腫により胆嚢破裂を起こしたために胆嚢を摘出しました。
胆嚢摘出手術ですが年々増えている気がします。2020年、2021年と年間10件以上がありました。
昨年の2021年は平均すると1カ月に1頭以上行っています。
胆嚢粘液嚢腫の原因として、犬種・遺伝・内分泌/代謝疾患・胆嚢内のムチンの蓄積などが言われていますが、近年の動物の高齢化も関与していると思います。
今回は2021年最後の胆嚢摘出手術の話です。
7歳の去勢済みのパグちゃんです。
食欲不振、嘔吐、元気消失で来院されました。
腹部のエコー検査では以前からある胆嚢粘液嚢腫に加えて、軽度腹水の貯留と胆嚢の輪郭が不整に見える事から、胆嚢壊死か胆嚢破裂と診断しました。飼い主さんと相談し、緊急手術をさせて頂くことになりました。
外科手術
腹部正中切開をして開腹してみると、腹水の貯留があります。
数時間で腹水(黄矢印)の量が激増しました。
さらに切開を加えていくと、破けた胆嚢から出てきたであろう胆嚢の内容物が遊離していました。
遊離した胆嚢粘液嚢腫のゼリー状内容物を取り出している写真です。
次は破けた胆嚢(白矢印)の摘出を行っていきます。
破けた胆嚢ですが、以前から炎症があったのでしょう。周囲の肝臓との癒着が激しく、肝臓から胆嚢を剥離する事ができませんでした。そのため、今回は癒着をしている肝臓(内側右葉と方形葉)ごと切除して摘出する事にしました。肝臓の切除にはシーリングシステムを使用し、安全で迅速に切除する事ができました。
摘出した胆嚢(ピンク矢印)と、切除した肝臓(緑矢印)です。
腹腔内から取り出した胆嚢の中身です。
割面を入れてみると中はこんな感じです。
典型的な胆嚢粘液嚢腫です。
本来であれば胆嚢の中身は胆汁という液体です。
この子は術後の次の日から食欲があり、早々に退院出来ました。退院後の定期的な血液検査も数値は順調でとても良い経過です。
術後の経過が良いのは、このパグちゃんの持って生まれた体力と、緊急手術を承諾してくれた飼い主さんのおかげだと思います。手術があと1日遅れていたらと思うとゾッとします。
まとめ
胆嚢粘液嚢腫の症状は急性です。症状は嘔吐が一番多く、次いで元気消失・食欲不振などです。
胆嚢粘液嚢腫があっても無症状の場合はあります。ただ、粘液嚢腫によって胆嚢梗塞・壊死、胆管閉塞、胆嚢破裂が起こると症状が出ます。
胆嚢粘液嚢腫により症状が出ている場合は外科手術が第一選択になります。
また無症状で偶発的に発見された胆嚢粘液嚢腫の外科手術は議論が分かれていますが、それでも内科治療に反応しない場合には、やはり外科手術が適応になります。
獣医師:林 敬明
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