# 81 : 犬の前十字靭帯断裂整復手術/ 関節外法(ラテラルスーチャー )
前十字靭帯は膝関節の中で、太ももの骨(大腿骨)とスネの骨(脛骨)を繋いでいる靭帯です。
前十字靭帯の役割は大腿骨に対して、脛骨が前方へずれる事や内側への回旋の制御をしています。
靭帯が完全に断裂すると脛骨が前方に変位することで、体重をうまくかけられず足を挙上する事があります。また前十字靭帯断裂によって大腿骨と脛骨の間の半月板が損傷するとさらに痛みが出てきます。
今回の症例は9歳のマルチーズです。数日前から突然の右後肢の挙上で来院されました。
レントゲン検査で前十字靭帯断裂と診断しました。正常な足と比較してみると、前十字靭帯断裂を起こしている脛骨が前方に変位(黄矢印)しているのがわかります。
前十字靭帯断裂整復手術
今回の症例は膝蓋骨の内方脱臼もあったため、そちらも同時に整復することにしました。
術中の膝の写真です。通常では膝蓋骨が治まっている場所の滑車の溝がほとんどなく、内側には潰瘍(黒矢印)も認められます。また、前十字靭帯が断裂(黒丸)しているのが目視できます。精査していくと、内側半月板の損傷も認められたため、前十字靭帯と半月板の損傷部位をそれぞれ取り除きました。
損傷した前十字靭帯と半月板のトリミングを行った後は、定法通りの関節外方(ラテラルスーチャー)を行い、脛骨を正常な位置に固定しました。
術後のレントゲン写真です。脛骨が正常な位置に戻っているのがわかります。
まとめ
前十字靭帯の断裂をそのままにしていると、関節炎や半月板損傷を併発することもあります。
靭帯は一度切れると再生することはありません。前十字靭帯断裂と診断されたら、かかりつけの獣医師とよく相談して治療法を決定してください。
獣医師:林 敬明
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