# 47 : 犬と猫の尿道結石・膀胱結石摘出術 / 【生死に関わる尿道閉塞】

『愛犬や愛猫が排尿姿勢をとっているけど、なかなか尿が出ない。』それは尿道に石が詰まり尿を出せない危険な状態かもしれません。

尿は左右の腎臓から絶えず作られ、尿管を通り膀胱に溜まります。一定量溜まった尿は尿道を通って体外に出ます。この通り道を『尿路』と言います。

尿路結石は存在する場所によって、腎結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石などと呼ばれます。

今回は雄犬と雄猫の膀胱から尿を出す尿道に結石が詰まった尿道結石の話です。

尿道に結石が詰まり、尿が出なくなると急性腎不全や膀胱破裂を起こし、最悪は死んでしまう場合もあります。

膀胱・尿道結石が認められる雄犬の術前レントゲン写真です。

結石は膀胱（黄丸）と尿道（赤矢印）に複数個認められます。

雄犬の尿道は出口付近に陰茎骨という骨があり、この部位の尿道は細く結石が詰まりやすい場所です。

術後のレントゲン写真です。

尿道と膀胱の結石は外科手術で全て除去してあります。

レントゲンに写っている線はレントゲン不透過性の尿道カテーテルです。

摘出した結石はストルバイトとシュウ酸カルシウムが約半分ずつの割合で混合していました。

・犬のストルバイトは感染が主な原因ですが、猫ではほとんどが無菌性で、主な原因は食事です。

・シュウ酸カルシウムを完全に予防できる療法食は今現在、存在しません。療法食を食べていてもシュウ酸カルシウム結晶や結石が出来てしまう場合はフードに加えて内服薬も併用していきます。

膀胱と尿道に結石がある雄猫のレントゲン写真です。

結石が膀胱（黄緑丸）と尿道（ピンク矢印）に認められます。

雄猫は雌猫に比べ尿道が細長くカーブをしていて、先端も細いので結石が詰まりやすい構造をしています。

雄猫の術後のレントゲン写真です。

尿道、膀胱ともに結石は手術で除去しました。

この猫ちゃんも膀胱にカテーテルを挿入してあります。

この猫の結石はシュウ酸カルシウム結石でした。

先述した通り療法食で溶解する事が出来ない結石です。

完全に予防できる療法食や治療薬はありません。原因は食事・ストレス・飲水量・トイレなどの環境要因などと言われています。

尿道に結石が詰まると、排尿しづらくなるので、排尿量が減ったり、尿に血が混ざったり、尿が全く出ない事もあります。

尿が出なくなると、急性腎不全や膀胱破裂を引き起こし、命の危険性があります。

愛犬・愛猫が長時間排尿姿勢をとっていたり、何度も排尿姿勢をとるのに、ほとんど尿が出ない場合は尿道結石の可能性があるので、なるべく早く動物病院を受診して下さい。

獣医師：林　敬明

症例紹介