# 32 : うさぎの精巣腫瘍摘出術 / 【うさぎの睾丸の腫れ】
今回はうさぎの精巣腫瘍摘出手術について話します。
うさぎの精巣腫瘍は片方、もしくは両方が固く腫れます。たとえ良性でも進行が早い場合があるので注意が必要です。
今回の症例も数週間で急速に大きくなり、来院されました。
診察時の仰向けの状態の写真です。水色丸の中にあるのが腫大した左の精巣です。黄丸は反対の右の精巣です。大きさの違いが一目でわかります。
犬・猫と同様にうさぎも高齢の方が腫瘍の発症率が高くなります。今回のうさぎちゃんも高齢でした。麻酔のリスクもあるので、飼い主さんと相談をした上、外科手術をさせて頂く事となりました。
うさぎの精巣腫瘍摘出手術
うさぎの麻酔は犬・猫以上に注意が必要です。
うさぎはストレスに弱い動物です。そのため手術中・手術後にもなるべく負担がかからないように気を付けます。特に疼痛管理・体温に注意をします。そのほか犬や猫と違う点として、目が閉じにくい構造なので、目の乾燥を予防したり、胸腔が圧迫されないような体勢で手術をします。
うさぎの麻酔ですが、従来うさぎはマスクを使って麻酔の管理をしていました。しかし、うさぎ専用の気道確保システムが発売されました。
見た目はこんな形をしています。
実際に設置した直後の写真です。
この気道確保システムを使用する時は挿入時に正しい位置に達した感覚の他に、生体情報モニターの波形や数字を確認してしっかり設置されているか確かめます。
手術を行う前の腫大した精巣(黄丸)です。反対の右側の精巣と比べると大きさの違いがわかります。
腫瘍を疑う左の睾丸は腫瘍の取り残しが無いように陰嚢の皮膚ごと切除します。確実で安全な手術にするためにシーリングシステムを使用して切除していきます。
今回のように片側だけが腫大している場合でも、反対の精巣も異常な場合があるので、必ず両方とも切除します。
摘出した左右の精巣です。
病理検査の結果は良性腫瘍の間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫)でした。壊死を伴っていたので、急速に腫大したと思われます。
腫瘍は完全切除されていたので、予後良好が期待されます。しかし浸潤や転移があると予後が悪い事があるので、今後も注意が必要です。
反対の右の精巣には腫瘍細胞がなく、精巣の萎縮が認められました。
まとめ
うさぎの精巣が腫れる原因として、腫瘍以外に精巣炎があります。精巣炎の場合、抗生物質が治療のメインになります。
今回ような腫瘍の場合では、治療は精巣を切除しなくてはいけません。
上記の精巣炎や精巣腫瘍を予防するためにも去勢手術が勧められます。手術に適した期間は生後6~12ヶ月です。
去勢手術をしていないうさぎちゃんは、左右の精巣で大きさや硬さに差がないかなど、ご自宅で定期的に確認してあげて下さい。
獣医師:林 敬明
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