# 23 : 犬の骨盤骨折整復術・仙腸関節固定術・膀胱ヘルニア整復術 / 【犬の交通事故】
骨盤骨折の原因は交通事故による外傷が最多数を占めます。
今回の症例(1歳10ヶ月の柴犬)も交通事故による骨盤骨折でした。
交通事故での骨盤骨折は、同時に組織の損傷も起こしている可能性があるので、注意が必要です。
実際に今回の症例も骨盤骨折(7カ所)の他に仙腸関節脱臼・膀胱ヘルニア・内臓損傷による腹腔内出血・血餅による左尿管閉塞など様々な問題がありました。
その為、1回目の手術で膀胱ヘルニアの整復手術を行い、2回目の手術で骨盤骨折と仙腸関節脱臼の整復を行いました。
1回目の外科手術(膀胱ヘルニア整復手術)
開腹した状態です。血液を含む腹水貯留が認められます。
嵌頓していた膀胱を腹腔内に戻し、漏れがないか膀胱内に生理食塩水を入れて膨らました状況です(黄矢印)
見た目も触感も正常な膀胱とは違います。
2回目の外科手術(腸骨骨折整復手術・仙腸関節固定術)
1回目の手術後に体調と食欲の改善が認められ、検査結果も安定した為、次は骨折と脱臼に対して手術を行っていきます。
横からのレントゲン撮影で腸骨の斜骨折(黄矢印)が認められます。
縦のレントゲン検査では、右の仙腸関節脱臼(黄矢印)、腸骨の斜骨折(赤矢印)の他に、恥骨と坐骨の骨折(青丸)も認めれます。骨盤だけで7か所の骨折があります。
骨盤は真っすぐな骨ではないのでプレートの曲げや捻じれの角度が重要です。またスクリューの刺入角度がわずかに変化するだけで、使用するスクリューの長さがとても変わります。その為、多岐にわたる種類のスクリューを十分な本数用意して手術に臨みます。
今回の手術は交通事故から7日経過していました。骨折から日にちがたっているため、骨折周囲の筋肉の固定や線維化が進んでいて、大変な手術でした。
術後のレントゲン写真です。右側の仙腸関節の固定と、腸骨の骨折の整復を行いました。
坐骨と恥骨の骨折(上記写真の青丸)は体重伝達には関係なく、仙腸関節と腸骨骨折が適切に整復固定されていれば自然に固定されて治癒に向かいます。
今回の症例は手術前は起立不能でしたが、術後2日目で立つことが出来、4日目から歩行も可能になりました。
まとめ
4月は整形外科がとても多い1カ月でした。
整形外科が必要な症例は外的要因や先天的な要因で行う事が一般的です。
骨折は、今回のような交通事故や、落下、飼い主さんが誤って踏んでしまい起こる事が多いです。
日常の様々な局面で骨折の危険は潜んでいるので、飼い主さんが事前に対処して、愛犬を守ってあげて下さい。
獣医師:林 敬明
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