# 3 : 大腿骨頭切除術 / 【若い小型犬で多い、後肢の痛み】 レッグ・ペルテス病(大腿骨頭壊死症)
トイプードルなどの小型犬はとても人気があります。可愛いですもんね。
飼い始めた子犬が日々成長していく姿は、飼い主さんにとっても幸せな時間です。
そんな子犬が生後半年頃になると、急に後ろ足を着かなくなる子がいます。
いったいどうしたのでしょうか?
今回は生後10ヵ月で起きたレッグ・ペルテス病(大腿骨頭壊死症)の大腿骨頭切除術の話をします。
『その他のレッグ・ペルテス病の症例紹介はこちらからも閲覧できます。』
余談ですが、この子は本当に可愛いんです! あまりに可愛くて、飼い主さんにお願いしてホームページの写真に使わせて頂きました。実は【設備】のページの一番右下のトリミングテーブルのちょこんと座っているのが、実はこの子なんです。
レッグ・ペルテス病(大腿骨頭壊死症)とは
レッグ・ペルテス病は別名「大腿骨頭壊死症」とも呼ばれています。トイ種や小型犬に多くみられます。
原因ははっきりとはわかっていませんが、後ろ足にある大腿骨頭への『血行障害』により、大腿骨頭の変形や壊死、骨折などの障害を起こします。
4~11ヵ月齢の若齢の小型犬で多く発症しますが、最も発症率が高いのが生後6~7ヵ月です。
また、15%程の確率で両足に発症します。
症状
- 跛行
- 足を引きずる
- 座る時間が増える
- 足を挙上する
- 痛がる
などの症状が一般的に認められます。しかし、座る時間が増えると飼い主さんは『大人しい性格』と勘違いして、病気が進行してしまうこともあります。
治療
レッグペルテス病は進行する病気の為、発症した犬のほどんどが最終的に外科手術になります。
外科手術では壊死した大腿骨頭を切除します。
それでは今回の症例のお話をしていきます。
10ヵ月齢のトイプードルです。
左後肢の痛みと挙上で来院されました。
診察台の上でも左足を挙げたままです。
触診をしてみると左足の筋肉が痩せています。この子は膝蓋骨脱臼もありましたが、股関節を触ると痛がります。
膝蓋骨脱臼でも同様の症状が出るため、鑑別が重要です。
レントゲンを検査を行いました。
左足の股関節(赤丸)が右足に比べて形がいびつです。
レントゲン写真でも右足に比べて、左足の筋肉量が少ないのがわかります。
左右の股関節を拡大した写真です。
右足に比べ左足の骨頭の方が色が黒く(青矢印)、骨融解を起こしています。
また、骨頭の平坦化(黄矢印)と亜脱臼(赤矢印)も認められました
前述の通り、進行する病気です。今回の症例は痛みも強く出ているため、内科治療ではなく、外科手術で壊死している部位を切除することになりました。
これより外科手術の話になります
大腿骨頭切除術
皮膚を切開し、大腿骨頭を露出するためにさらに切開を進めていきます。
大腿骨頭を亜脱臼させ、靭帯を切断すると、大腿骨頭(黄丸)が容易に観察することができます。足をしっかり外旋させた状態で大腿骨頭を切除していきます。
大腿骨頭を切除する時にサージカルブレードを使用します。ブレードは骨の太さに合わせてサイズを変更します。きれいに切断でき、切断面に骨の棘が残りにくいです。
切除した大腿骨頭です。モーターで切っているので切除面はきれいです。
病理検査の結果、レッグ・ペルテス病と診断されました。
骨頭部は広範囲に壊死を起こしていましたが、壊死部は完全に切除されていました。壊死部が完全に切除されていないと、痛みが続いてしまいます。
完全切除できているので一安心です。
まとめ
「大腿骨頭が無くなってしまっても大丈夫?」と心配される飼い主さんは多いですが、ほとんど問題はありません。大腿骨頭がなくなっても、周りの筋肉が股関節の関節機能を補助してくれるからです。
しかし、正常な歩行になるまでに早い子で術後2か月、遅い子だと8ヵ月程かかるため、手術後は自宅でのリハビリや散歩等がとても大事になってきます。
獣医師:林 敬明
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